バリアフリーお遍路の旅

2003年10月3日〜10月7日
徳島・高知体感の旅

第3日目・・・10月5日 (日) レポーター 松岡洋子

早朝、本堂にて朝のお勤めをしました。お経を読み終えた後、住職の方からお話がありました。それは知り合いの人の引越し話で、押入れを片付けていたら、奥からぞうきんがでてきたそうです。自分で使ってきたお部屋をきれいに掃除し、次の方へお渡しする、そういった心づかいが大切だというお話でした。
今日のパートナーは黒田わきよさんと盲導犬シャールちゃん(7歳メス)でした。まわったところは、番外札所鯖太師、最御峰寺、御厨人窟・神明窟、津照寺、金剛頂寺でした。
シャールちゃんはとてもおとなしく、かわいらしい犬でした。同じ盲導犬でもダイスケ君とシャールちゃんは違いました。ダイスケ君は老犬でも活発で元気、シャールちゃんはおとなしく控えめ。顔や体も違いました。人それぞれ違うように、犬も違いました。そういうのが分かってくると、どちらもますますかわいくなってきました。
黒田さんもご自分でなんでも出来る方でした。注意をしながら見ながらも、必要なとき、困ったときだけお手伝いするように心がけました。
最御峰寺に行くまで、山の中を30分ほど歩きました。黒田さんは、シャールが旅疲れであることから、山歩きは遠慮されていましたが、ツアーの参加者は60歳以上の方ばかりなのに、ほとんどの方が歩かれていて驚きました。
津照寺というお寺は、本堂に行くまでに急な階段で何段もあり、しかも狭い階段でした。私は黒田さんに階段が何段ほどあるか伝え、あとはご自分で、片手に手すり、もう片方の手にシャールというスタイルで、上り下りなさっていました。
途中手すりが切れたときだけサポートしました。黒田さんは、シャールができるかどうかとても心配されていましたが、無事に終えることができ「シャールも自信がついた」と喜んでおられました。
盲導犬は吠えることなく、ご主人様に忠実で、けなげで、本当にかわいらしいです。
黒田さんの話によると、数年前は八十八箇所巡りで盲導犬を連れて行くと、堂の中に入るのを断られたそうです。最近になってようやく許可がおりたそうで、寺でもそういうことがあったのかと思うととても残念です。
黒田さんの「このシャールは私の目です。だから一心同体です。」という言葉が印象的でした。


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【 レポータープロファイル 】

松岡洋子(まつおかようこ)

2003年10月から6ヶ月間の社会体験研修のため、トヨタビスタ高知で研修中の高知市立初月小学校教諭。出身の福島県から高知に来てようやく2年という新米高知人であり、また新米VISTA人でもある。ショールームで心細げにたたずむ姿は借りてきたチワワのようである。

<<< 松岡洋子の研修後記!>>>

 10月3日から4泊5日で「バリアフリーおへんろ巡り」に参加させていただきました。
出発する前、大原さんから視覚障害者の方や高齢者の方を喜ばせ、良い人間関係をつくってきてほしいというお話がありました。きちんとサポートできるかどうか不安でありましたが、事前に、とても良い思い出になる研修だと聞いていたので、期待をもって臨みました。
東京や大阪、名古屋などから多くの方が参加していました。ほとんどの方が何回もこのツアーに参加しており、顔見知りのようでした。私がサポートさせていただいたのは、視覚障害者の方で、盲導犬同伴の木村さん、黒田さん、高齢者でもある鬼頭さん、私と同年代の森さん、弱視の石原さんでした。皆さんが共通していたことは、明るく元気で、前向きであること、また、何事に対しても意欲的であるということです。
最初はどこまでサポートしてよいか分からず、あらゆる所で声をかけ、サポートしていたのですが、「必要な時だけお願いします。その時は、きちんと言いますので。」と伝えられたので、それからは、注意をしながら見つつも、必要な時、困った時だけお手伝いをするようにしました。
 歩く時は、私の腕や肩をもってもらい移動しました。注意する点で教わったことは、階段の手前にきたら、およそ何段ぐらいあるのか伝えることや、お線香やろうそくをつける時は、かわりに火をつけ、その後一緒に手をそえてあげることなどです。また、食事の時は、お椀の位置などを時計の文字盤に置き換えて伝えることも分かりました。お茶を入れたり、しょうゆやソースなどをかけたりするのは私がやりましたが、その他は全部ご自分でおやりになっていました。宿泊場所では、トイレや洗面所などの位置、部屋では窓やテーブル、ごみ箱などを伝えただけでした。なんでもこなせる皆さんを見て、感心の連続でした。
皆さんと話しているうちに分かったことですが、ほとんどの方が今までに多くの旅行をなさっているということです。外国の方まで足を運んでいる方もおられました。そういった経験が自信にもつながっているのだと思いました。
その他、盲導犬と同伴なさった木村さんや黒田さんのお話の中で、とても印象的な言葉がありました。「ダイスケは大切な家族の一員です。」「シャールは私の目です。だから、一心同体です。」という言葉です。お2人にとって、ダイスケとシャールはかけがいのないものだと実感しました。
今回ツアーに参加されたどの方も、笑顔が素敵で生き生きとされていました。
5日間の短い旅でしたが、たくさんの親切をいただきました。また、人を思いやる心、人に対する心配り、人と人とは支え合って生きていること、たくさんのことを学んだ旅でした。このような貴重な経験ができたことに感謝しています。
早く、真の意味での一人ひとりの心のバリアフリーができることを願っています。