比類なきパワーとスタビリティを持つRS200は生粋のグループBラリー・カー。
しかし、時が勝利を許さなかった悲運のマシンである。
フォードがWRC(ワールド・ラリー・チャンピオンシップ)カテゴリー・グループBでの 勝利を獲得するためだけに生産した、コンペティティブラリー・カー、RS200。
しかし、マシンのデビュー後、わずか半年足らずでグループBは廃止。 RS200のWRCチャンピオンへの挑戦は幻となってしまった。
高性能ラリー・マシンたちが開発されたグループBの時代。
フォードRS200を語る前に、まずその時代背景となるFIAグループについて触れねばならないだろう。
グループBとは、1983年までWRCの主導権を握っていたグループ4に代わりラリー界に登場したカテゴリーである。新たな規約として、12ヶ月間にわたる生産台数を200台以上とすることが義務づけられた。グループ4の時代と比べると、義務生産台数が大幅に削減されており、マシンは一層コンペティション・マシンとしての要素を強めていった。
それまで耐久性が重視されていたラリーカーに、軽量で剛性の高いボディが与えられるようになり、4駆やミッドシップ、繊細な電子制御エンジンにエアロパーツなどが開発され、ラリー界で活躍を始めたのもこの頃である。
このようにグループBは多くの技術革新や話題をもたらした。しかし、高性能ゆえに事故も多く、わずか4年で廃止された。それは、あまりに突然の終焉であった。
フルタイム4駆に高出力エンジン。フォードが勝利にかけた執念。
グループB最盛期、フォードが優勝を獲得するためだけに開発したマシンがRS200である。
モータースポーツの最高峰といわれるF1のポテンシャルをラリーにフィードバック。シャーシデザインにはトニー・サウスゲートによる非常に剛性の高いプラットホーム型を採用した。市販車のイメージを持たないスタイリングは、空力学を考慮したギア製のFRPボディが用いられた。そして、コスワースBDTと呼ばれるオールアルミ1803c.c.DOHC16バルブエンジンにギャレットT4ターボを装着している。
また、RS200ならではのメカニズムとして、駆動方式はレバーひとつで「後輪駆動」「トルク配分がF37/R63のフルタイム4駆」「セルターデフ・ロックによるF50/R50の4駆」の3種類が選択でき、あらゆる路面状況に適応できるフレキシビリティを持っていた。
ほとんどのはパーツに量産車の流用でなくRS200のためだけにつくられており、勝利にかけたフォードの執念を感じることができる。
四国自動車博物館に静かにたたずむRS200は、グループBのフィールドを疾駆する夢を見続けているのかもしれない。
specification |
Engine Type |
直列4気筒DOHC |
Cubic capacity |
1,803cc |
Maximum horse power |
250hp / 8,500rpm |
Maximum torque |
19.8kg-m / 4,500rpm |
Compression ratio |
8.2:1 |
Brake |
4-wheel Ventilated Disks |
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