ALPINE RENAULT A110-1600GS

 

ラリーフィールドに咲いたパリジェンヌ。
1972年にデビューしたワークス・アルピーヌは、厳冬期のフランス・アルプス山中を激走した。

1950年代、フランスの大衆車であったルノーをベースに誕生したアルピーヌ。
ラリー・レースへのチャレンジだけを目指してパリにデビュー。
なかでも、当時ラリー・レース界をリードしていた王者ポルシェを脅かし、その名を世界に知らしめたマシンこそアルピーヌ・ルノー・A110である。

alpine renault photo

WRCでポルシェを脅かすフレンチ・クーペ。
アルピーヌの歴史はルノーのパワー・ユニットから始まる。1953年にアルピーヌ・A106・ミッレ・ミリアが登場。1957年のA108を経て、1963年にA110は誕生した。流線形のボディ、張り出しのオーバー・フェンダー、地を這うほどの車高といった独自のスタイルが目を引くが、これは’60年代の優れた空力学の特徴であり、アルピーヌがラリー・レースを目指してつくられた証である。
戦歴も輝かしい。1969年のアルペン・ラリー、1971年のモンテカルロ・ラリーで1位から3位を独占。1966年のル・マンでも上位3位(クラス別)を独占しており、A110は常にレースの上位にくい込む実力を誇っていた。そうしたなか、年々マシンは熟成され、1973年のWRC(ワールド・ラリー・チャンピオンシップ)では、シリーズ総合優勝を果たしている。A110の完成によりアルピーヌは黄金時代を迎え、当時の王者ポルシェに鋭く迫っていた。

優れたドライビング・ポテンシャルを秘めたワークス・アルピーヌ。
四国自動車博物館に展示されているのは1972年製のA110−1600GS。シリーズの中でも優れたワークス仕立てのアルピーヌである。同年のモンテカルロ・ラリー参戦後、セミ・ワークスに渡りエンジンを1800ccに拡大、170馬力を発生させたという。これは’70年代では異例の高圧縮比OHV4気筒エンジンで、リアに搭載している。ステアリングはラック・アンド・ピニオン。ブレーキは前後にディスク・ブレーキを備えていた。
そしてこのマシンの性格を決定づけたのが軽量のグラスファイバー製ボディ。車両重量はわずか685kg。ノーマルの1600Sでさえカタログデータは0-100km/hまで7.8秒。チューンアップされた1600GSの速さが容易に想像できよう。1973年のモンテカルロ・ラリーでは総合14位の好成績を収めた。
現在のボディ・カラー(トリコロール・デザイン)は再整備にあわせて採用されたという。このボディの随所に残る当時の余韻に、勇壮な姿を想うのはラリーストたちばかりではないだろう。

SPECIFICATION

Engine Type 4-stroke OHV Displacement 1800cc
Maximum horse power 170PS/7000rpm Maximum torque 18.4kg-m/6000rpm
Dry Weight 685kg Engine layout rear